『美しい街』
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2019-07
尾形亀之助(1900-1942)という詩人のことを初めて知ったのは、穏やかな音楽を奏でる音楽家のAさんが、自分が好きな本について書いていた文章からだった。
そのあとしばらく経って、夏葉社さんが55編の詩を編んで、それらが小さな美しい装丁の詩集となって出版されたとき、ああ、あの時の。と久しぶりの知り合いに偶然再会したときのような気持ちになった。
「眠らずにいても朝になったのがうれしい。
消えてしまった電燈はかさばかりになって
天井からさがっている。」
亀之助の詩はまるで写真や、映像のワンシーンのようだと思う。
心が感じたその時の「空気」を、彼はそのまま言葉にして紙の上に定着させるのだ。
◉「美しい街」/尾形亀之助(夏葉社)