『公衆サウナの国フィンランド』
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2019-12
それまでもサウナ好きだった私が完全にサウナにとりつかれたのは、数年前に山の湖のほとりで体験したフィンランド式のサウナと湖水浴がきっかけだった。
あの自然と一体化する感じは、温泉の脇にひっそりとあるサウナと水風呂の関係とは全く異なる魅力がある。
この本には、そんなフィンランドで日本の銭湯のように衰退した後、再びその価値が見直されているフィンランドでのサウナの歴史と、サードプレイスとしての公衆サウナのあり方がインタビューや資料をもとに詳細に書かれている。
歴史のある公衆サウナから、お洒落で現代的なサウナ、アナーキーでフリーダムなサウナまでその形は様々だ。
サウナと銭湯、フィンランドと日本、全く違うようでとても親近感を感じる。そして読みながら、サウナというものがフィンランドの文化を体現していると思うのと同時に、日本との明らかな違いを感じたのが、注意書きや規則で公共の場を縛ることなく、お互いが気持ち良く過ごせるよう、個人の行動と良心に委ねているということ。
紹介された公衆サウナのひとつ、人々のDIYによって作られたソンパサウナについてのこの一文は特に私をシビれさせた。
「公共の場を自律的に守ろうという一人ひとりの良心があれば、どんな監視の目を持たなくても、究極的な自由の喜びを他者と享受しあえる、という自由主義社会の理想郷を実現させた」
今の日本に必要なもの、今後の価値観としてとても重要になっていくであろうものをたくさん感じることができた一冊だった。
◉公衆サウナの国フィンランド/こばやしあやな