『世紀のラブレター』
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2019-12
どちらかといえば女性よりも男性の書き手の方が好きなのですが、梯久美子さんは例外のひとり。ちょっとドライで、その人と人生を素の部分から浮き彫りにしていく文章は職人を思わせます。
この本では、様々な著名人のラブレターからその姿を浮き彫りにしていきます。
歴史に名を残した人々も、一人の男だったり女だったり、皆、恋愛を前にして無防備なまでに素の自分を晒しているのです。
いやむしろ「素」にならなければ、人を本気で好きになんてなれないということなのかも知れません。
どの手紙も心に染みましたが、特に戦時中に書かれたものは、限りあるその命の重さと相まって胸を打つ言葉ばかりで、時にはその想いの深さにページをめくる手が止まってしまったりもしました。
人生で一度でも、その恋愛の成就に関わらず、自分がすっかり「素」になって誰かを愛することができたなら、それは幸せな人生だったといえるのではないでしょうか。◉世紀のラブレター/梯久美子