『よあけ』
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2019-07
夏のはじまりが近づくと、必ず読みたくなる絵本がある。
詩情という言葉を絵本にするなら、この絵本のような風景にたどり着く。
湖のほとりのおじいさんと少年、焚火の煙、風のそよぎ、生きものたちの気配。 そうして静かに静かに、美しい朝が訪れる。この絵本では、何一つ冒険も事件も起きないけれど、そこには静寂と安らかな時間が流れている。
言葉と言葉のあいだに佇んでいる空気や温度や音を感じるために、記憶を手繰り寄せ、じっくりとその風景を味わう。
夜明けは希望だ。光が世界に満ちてゆく。絵本を前に、静かに幸福感に満たされてゆく。
◉よあけ/ユリー・シュルヴィッツ