『STILL LIFE』
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2019-03
昨年の12月、趣味の一つである物件ウォッチングをしていたときに気がついた。ずっと空き家だと思っていた家の窓辺に、クリスマスツリーらしきものがあることに。窓越しにぼんやりと光る12月のツリーは、そこに確かに人が住んでいることを示唆するのに十分な存在で、ちょっと心が震えた出来事だった。
この写真集も、そこに住む人の物が撮られているようでいて、実は先ほどまで確かにいた人の気配が写っているように思う。止まった時間ではなく、流れている決定的瞬間のようなものが。
グラスに詰め込まれすぎのたんぽぽ。開かれたままの単行本と飲みかけのマグカップ。もしも私が小説家なら、一枚の写真から想像を膨らませながら小説を書きたい。
カメラを毎日持ち歩いていた頃、こんな写真が撮りたいと憧れて買った写真集。何となく、このアパートのことを好きなひとは好きなんじゃないかと思って、久しぶりに手に取った 。
『STILL LIFE』一之瀬ちひろ