『物物』
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2019-05
旅先で買った本を開くと、その旅の思い出がページからふわふわと立ち昇る。
その日は朝から大雨だった。青春18切符でのんびりと西へ。丸亀駅から徒歩1分の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館。そこで開催されているホンマタカシの展覧会と同時開催の『物物』展が今回の旅の目的。『物物』は、猪熊弦一郎の著書『画家のおもちゃ箱』のなかに登場する物たちをスタイリストの岡尾美代子が選び出して、写真家のホンマタカシが撮影するという何とも素敵な企画。ついこの間のことと思っていたら、2012年ですって。また行きたいな、香川。
猪熊弦一郎が集め、ホンマタカシが撮り、岡尾美代子が選び、堀江敏幸がエッセイを寄せ、菊地敦己が編集をするという超豪華メンバーで作られたこの本。表紙は真面目そうで、ちょっと敷居が高そうにも見えるけど、ページを開くと、岡尾さんとホンマさんの撮影中の会話が面白くって、くすくす笑ってしまう。
シンプルにシンプルにと最近はいろんなものを手放しがちだけれど、物に愛される人生って何て素敵なんだろうと心が揺れる。でも、猪熊さんをうっかり真似すると(真似なんてできないけど)、確実に痛い目にあいそうなので、今のところは旅でいろんなものを見て、本で再会するぐらいのそんな距離感がちょうどいいのかなと思う。
『物物』 猪熊弦一郎/ホンマタカシ/岡尾美代子/堀江敏幸/菊地敦己