『土 地球最後のナゾ』
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2019-04
卓球部と将棋部をハシゴして少年時代をすごしたインドア派の著者が、長靴とスコップをカバンに詰め込み、100億人を養う土壌を求めて、12の土をめぐる旅に出る。
「人も土も見た目が八割」「ホットケーキセットを支える粘土集積土壌」「スマホも土からできている」「宮沢賢治からのリクエスト」などなど、目次からしてワクワクする、というか、ちょっとどうかしている。
予算の獲得、言語の壁、現地での大変なエピソードなど、土だけに泥臭い話が満載だが、苦労をも楽しんでいるような表現がとてもスマートで素敵だ。
偉い学者さんの研究の話で終わることなく、今の私の生活の中で身近に関わることも多かった。自分を形成するものとして、「何を食べるか」は大事なこととしていたけれど、「どこの土で育ったものを食べるか」は、あまり考えたことがなかった。これは明日からの生活にもぜひ取り入れてみたい。
“自分の足元の土が何で、どんな特徴を持っているのかということを普及できれば、現地の人々からもっと良いアイデアがでてくるはずだ。どこかよそに新しい土を見つけなくても、足元の土にはまだまだ可能性と希望がある”
「足元を掘れ」という今までに何度も耳にしてきた言葉も、実際に地面に這いつくばって、世界の土を掘り起こしてきた著者の実感のこもったものとして聞くと、「あぁ、本当にそうだなぁ」と思って、すごくぐっときた。
『土 地球最後のナゾ』 藤井一至