『セミ』
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2019-07
朝、蝉の合唱で目が覚める季節になってきた。アブラゼミの声を聞くと、自分が天ぷらになってしゅわしゅわ空に揚がっていくような、そんな気持ちになる。
どうやらアブラゼミの名前の由来は、まさに鳴き声が揚げ物しているときの音に似てるかららしく、子ども科学電話相談でそれを知ったときは、少し嬉しかった(諸説あるみたいです)。
「トゥク トゥク トゥク!」
ショーン・タンの描くセミの鳴き声は、わたしの知っているカラッとした声とは少し違う。高いビルで働くセミ。仕事はデータ入力。17年間ノー欠勤でノーミスのセミ。鳴き声なのか、それとも泣き声なのか。自分の立ち位置がぐらぐらするこの世界に無性に惹かれてしまう。まだ知らない作品ばかりなのが嬉しいような恐ろしいような、そんな作家に出会ってしまった。
近所の蝉の声も、もっとちゃんと聞いてみれば、違った声が聞こえるのかもしれない。「カラッとなんてしてませんけどね」って言われるのかも。などと想像しながら、ニンゲンもっと精進いたさねばと思った次第です。
『セミ』 ショーン・タン