『スープ・レッスン』
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2019-04
有賀薫さんの、どうにもこうにも朝が苦手な息子さんのために、「おいしいスープがあったら目を覚ますかも」と思って、毎朝スープを作り始めたエピソードが好きだ。
人に何かアドバイスを求められてるのかなと思うとき(そういうときは大抵求められてないんだけど)、ついペラペラと調子に乗って話してしまった自分の言葉を、家に帰ってから省みる。できることならば、「早く起きなさい!」ではなく、「スープできたけど食べる?」の方向の声を掛けたかったのだけど、うーん、果たしてどうだったかなぁ。
この本、お腹もあまり空いていなくて何も作りたくないようなとき、前に作ったあのスープならと、今まで何度も力を湧き立たせてくれた。それは、紛れもなく、何も作りたくなかったはずの自分の中から湧いてきた力だ。そして、スープを飲み干す頃にはすっかり、「やったぞ、私」という気持ちになっている。この気持ちは、「起きなさい」と言われる前に起きられた、ちょっとくすぐったいような幼い頃の気持ちに似ているのかもしれない。
そっか。この本自体が「スープできたけど食べる?」なのか。SNSなんかで、ドヤ顔でみんながスープ作りを楽しんでいるのを見て(私もそのひとり)、有賀さんは今宵もしめしめと微笑んでいるに違いない。
『スープ・レッスン』 有賀薫