『ジェットコースターにもほどがある』
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2019-03
初めて宮田珠己を読んだきっかけは、何年も前に美術館の友の会の会報に載っていた学芸員さんのコラムだっだと思う。確か、「休みの日にしたいこと」みたいなお題で、「ひなびた温泉旅館に泊まって、だらだらとプルーストの長編小説を読みたい。宮田珠己の『四次元温泉日記』に出てくる旅館に順番に泊まってみたい」というようなことが書いてあった。私はその学芸員さんの「難しいことをわかりやすく説明してくれて、時々くすっとするようなユーモアのある文章」の密かなファンだったので、「よくわからないけど何かカッコイイ」と思いながら、プルースト、ではなく、宮田珠己を読むことにした。これがとても面白くて、たくさんある著書を少しずつ読み進めている。
まず、この本はタイトルがいい。「名詞+にもほどがある」で、ジェットコースターの右に出る用例はないのではないか。「マックスバリューにもほどがある」では、すでにバリューはマックスと言ってるのだからちょっとくどいし、「サトウのごはんにもほどがある」だと、大衆食堂が大好きなサトウさんのグルメ本みたいだ。これはちょっと読みたい気もする。サトウさんはきっといい人だ。
まえがきを少し読んでみよう。
〝ジェットコースターが好きである。
ジェットコースターなんか子供の乗り物だと思っていたが、30代後半になった今、依然として乗りたい。〟
いいなぁ。「依然として」が良いよなぁ。私も30代後半になった今、依然としてアメリカンドッグが食べたいし、依然としてパフェが食べたいです。
というわけで、私は特別ジェットコースターが好きというわけでもなく、この本を読み終わっても、「さぁ、これからジェットコースターに乗りに行こうぜ!」という気持ちはさほどわいてこないのだけれど、ちょっと疲れたぞという日なんかに、宮田珠己の文体に触れて、うっとりしたりケラケラと笑ったりするのが好きだ。
そして依然として、プルーストは未読である。
『ジェットコースターにもほどがある』 宮田珠己