『ほぼ命がけサメ図鑑』
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2019-10
この本を読むのは、おそらく二種類の人間だと思う。サメがめちゃくちゃ好きな人と、サメが好きでも嫌いでもない人だ。わたしは、寄藤文平さん、鈴木千佳子さんの装幀に惹かれてこの本を手に取った後者の人間だが、読んでいるうちにまんまとサメのことが気になるようになってきた。
何て面白い生き物なんだろう。ていうか、サメの分類ってそれで良いのかと思うほど、サメは多種多様だ。そして歯などのディテールがめちゃくちゃかっこいい。サメというひとつのジャンルで、恐竜に通じるぐらいの面白さがあるように感じた。そして、何よりも今生きていて、泳いでいるところが見られるのだ。あぁロマン。未来のサメ界のエースが、各地で誕生しているのも頷ける。
この本の目的のひとつは、サメに対する誤解や偏見を解き、人々の「シャーキビリティー」を高めることだ。シャーキビリティーとは、「サメに対する知識や熱い気持ち」という意味の著者が作った造語である。この本を読んで、わたしのシャーキビリティーは随分と高まったと言える。
時には低体温症におそわれたり、標本づくりで手の甲にサメの歯を突き刺してしまうなど痛々しい場面も。体当たりでできあがったこの図鑑には、そんな苦労をものともしないサメ愛が隅々まであふれている。軽やかな語り口でありながらも、ずっしりと重い。そんな一冊だった。
『ほぼ命がけサメ図鑑』 沼口麻子