『へろへろ』
-
2019-05
この本を読んでいると「へろへろ?」と尋ねられる。既にこの本を読んだ人にも読んでいない人にも。前者の「へろへろ?」からは、言わずとも「いい本だよね」がにじみでている。後者の「へろへろ?」は、「なんか変な本読んでるね」って感じだろうか。どんな本なのかを言おうとするも言葉にならなくて、へらへら笑いながら「へろへろになるくらい面白いですよー!」と言ってしまう自分がいる。
お金を集めて特別養護老人ホームを作る話。しばらく仕事がなかった編集者が雑誌を作る話。介護の話。どれもまぁそうなんだけど、ひとつひとつの境界があいまいだ。ちょうどこの本で作ろうとする「よりあいの森」のように。
私は「本当のこと」と「ロックなこと」に弱い。この本は鹿子裕文という書き手によって、その涙腺スイッチが随所に散りばめられており、その結果、何ページかに一回は泣いてしまうことになる。だからもう、読み終わる頃にはへろへろだ。
そんなあまり中身のない感想を、以前にもSNSに載せたことがある。そうすると、あろうことか「よりあいの森」のかたが「いいね」を押してくれた。そのアカウントには、当たり前のように施設に遊びに来ている猫や、バザーで売られる手作りのクッキーやグッズ(どれもクオリティがすごい)、傾いたまま置かれているコーヒーカップの写真などが載っていて、まさに『へろへろ』で読んできたものの続きのようで(実際に続きなのだが)、「本当」だし「ロック」だなぁと感じ、そしてそれらはどれも美しいと思った。
この本について語ろうとすると口ごもってしまうのは、描かれているものに対して、あまりにも薄っぺらい自分の「本当」があぶり出されてしまう気がして怖いからかもしれない。それでも、どうしても自分の本棚に並べておきたかった。そんな大切な本。
『へろへろ』 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々 鹿子裕文