『ぱりぱり』
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2019-05
可愛らしい装丁の本がライブラリーにあるなぁと前から気になっていた。
主人公の菫(すみれ)は17歳でデビューした詩人。妹、編集者、隣人、さまざまな「誰か」と「菫」の話で物語は進んでいく。ドライヤーで髪を乾かすとき、料理をするとき、眠りに就く前。自分以外の「誰か」のことを考える時間は、1日に何度も訪れる。なのに、自分以外の「誰か」が自分のことを思っている時間があるということが、わたしは今ひとつ信じられない。毎日、誰かから何かを受け取ってばかりのような気がして、いつになったら返せるんだろうかと思ったりもする。
でも、この本を読むと、どうやら人は生きている限り、何かしらの影響を与えたり与えられたりしているらしいぞという、当たり前なんだけど実感としてよくわからないことが、可視化される。本って、小説って、本当にありがたい。
その頭でもって読み進めていくと、何を考えてるのかよくわからない(裏を返せば、自分の世界がある)菫に心を揺さぶられる周りの人たちに、思わず謝り倒したくなってしまった。 身に覚えがありすぎる。ごめんなさいごめんなさい。「えー皆さま、ただ今より、お詫びの気持ちに切腹最中をお配りいたします」
と、いきなり謝られても困ってしまうと思うので、「ありがとう」を言おう。何の脈絡もなくていい。あの人や、あの人に、そしてまだ見ぬあなたにも。
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『ぱりぱり』 瀧羽 麻子