『サカナ・レッスン』
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2019-07
『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』のキャスリーン・フリンが今度は日本で「サカナレッスン」をしてくれる……のかと思って読み始めたら、レッスンを受けるのはキャスリーン本人だった。
深いカルベネ色のマグロ、生きながらえようと必死な貝との格闘、少し苦手なウニのテクスチャ。“正直少し、魚がこわい”と語るキャスリーンの目を通して描かれる日本の魚文化、日本の風景は、とても新鮮で繊細でチャーミング。そしてとてもとても寿司が食べたくなる。
今回、この本について書くにあたって、前述の本のなかの特に心に響いたところをメモしているノートを久々に読み返してみた。それは、料理のことを書いているというよりも、当時自分が迷っていたことの答えを本の中に探し、見出そうとしていたことがよくわかるものだった。そして、この本にも同様に、大切な言葉との出合いがあった。それは、第七幕のタイトルにもなっている「キャッチ&リリース」だ。釣り、築地、そしてキャスリーンの人生。一見バラバラのようにも思われるこれら一連のことからの気づきは、自分の中にもすとんと落ちるものがあった。
わが家にはまだ包丁は一本しかなく、あまり大きな魚には挑戦したことがないけれど、そろそろ二本目の包丁を買ってみてもいい頃なのかもしれない。そう思った。「家庭料理人バンザイ!」そんな気持ちにさせてくれたキャスリーンに、あらためてありがとうを言いたい。
『サカナ・レッスン』 キャスリーン・フリン