『ふたりからひとり ~ときをためる暮らし それから~』
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2019-06
新しく三階に引っ越して来られたご夫婦は北海道の方みたい。
何年か前に夫と旅行で北海道に行ったとき、わたしのリクエストでレーモンドが設計した教会の見学に行った。レーモンドは、建築家の津端修一さんのお師匠さんということで、作ったものを一度見てみたかったのだ。住宅街のなかに現れるレンガと木でできた教会は静かで柔らかな雰囲気で、奥さんが手掛けた和紙の幾何学模様もとても面白く、唯一無二の場所だった。つばた夫妻の自邸もこんな感じなのかなと想像をしながら、誰もいない夕方の時間にぼんやりとふたりで建物を眺めるのはとても幸せな時間だった。
この本は、タイトルの通り、仲良く暮らしていたふたりが、ひとりになってからの話が綴られている。それはちょっと寂しくて、なかなか読めずに今日まで来てしまった。でも憧れの人を考えていたときに、やっぱりひでこさんが思い浮かんだ。いざ読んでみると、ところどころ泣いてしまうところはあったけれど、ひとりでもまるでそこにしゅういちさんが居るようにひでこさんは暮らしておられて、相変わらずふたりだった。
おふたりともめちゃくちゃ強いと思うんだけど、弱虫だ、弱虫だって言う。「世の中で生き残れるのは、じつは弱い人間なんだと思います」って。とても心強い言葉だ。この二人がそう言うのであれば、きっとそうなんだろう。胸を張って弱虫で、生き残ってやろうじゃないですかという気になる。コツコツ、ゆっくり。ですよね、ひでこさん。
『ふたりからひとり ~ときをためる暮らし それから~ 』 つばた英子 つばたしゅういち