『1坪の奇跡』
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2019-06
こんな人に憧れるシリーズ第二弾は、行列がとぎれない和菓子屋「小ざさ」の社長の稲垣篤子さん。
とにかく痺れるエピソードがたくさんのこの本、再読する前は、色んなことを我慢して羊羹ともなかひとすじの人という印象をなぜか持っていたのだけれど、どうやらまったく違っていたみたいだ。
羊羹の道を継ぐ前には、カメラマンの仕事をしている。仕事と家事の話なんかも書かれていて、新婚旅行から帰ってくるなり「勤めは勤め。あなたはあなた。私は私。フィフティフィフティですから」と夫に宣言する。足が痛くなったら、本で仕入れた「後ろ歩きがいい」という情報で、朝晩歩いて自分で治してしまうし、ストレス解消はゴルフの打ちっ放し。なかなかファンキーな先輩ではないか。
「少しずつ少しずつ前に出ていけば、いつか一番いいところに行ける。だから急がなくていい。ただ、前に出ることだけは忘れずに」これは、お祖母さんが満員御礼の歌舞伎の公演に行ったときの話をしながら伝えてくれた言葉。あきらめないこと。信じること。少しずつ前に進むこと。奇跡とは、自分と地続きの「一歩前へ」を繰り返したときに、必然的に起きるものなのだなと、この本を読むと思わされる。
『1坪の奇跡』 稲垣篤子