『風が強く吹いている』
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2019-08
私は運動が得意ではない。水泳は上手く泳げずすぐにコースアウト。体育祭のリレーでは、転んだ前の選手を抜かしたにも関わらず、追い抜き返された。挙句の果てには、落ちていたボールを拾おうとして小指の骨を折った人間である。しかし、そんな私がこの本を読み終わった後どうしようもなく走り出したい衝動に駆られた。
この本は、箱根駅伝を目指す選手達の物語だ。10人の選手が1つの襷を繋ぐ箱根駅伝。ただ、その背景には必ず1人1人それぞれの物語がある。劣等感や焦燥感に苛まれどうしようもなく苦しみ、悩む彼らがそこにはいた。しかしそれでも、彼らは決して走ることをやめない。「強く」あるために、自身の足で何度でも前へと進む。その姿は、とてつもなく眩しく、胸を熱くする。
もう1つ。この物語には清瀬灰二という男が出てくるのだが、その彼がまあ、めちゃくちゃカッコいい。どのくらいカッコいいかと言うと「好きなタイプは?」と聞かれて「清瀬灰二」と答えるぐらいにはカッコいい。私は彼に惚れている。
「走りとは力だ。スピードではなく、1人のままでだれかとつながれる強さだ。」
もう一歩踏み出したい時、勇気が欲しい時に必ず読み返す1冊。
『風が強く吹いている』三浦しをん