『月魚』
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2020-02
「古本」の世界でしか息ができない青年2人。
彼らの関係に名前をつけるのは難しい。けれども、「名前のない関係」だからこそ2人は一緒にいられるのかもしれない。
憧憬やら思慕やら嫉妬やら、その全てが入り交じって彼らを繋ぐ1つの手綱になっているのだろうか。
彼らを通して、時間が治してくれる傷とは対照的に、時間が経てば経つほど化膿していく傷もあるのでないかと気づいた。それでも、傷を負いながら、彼らは見えるもの見えないものに雁字搦めにされていた日々と別れを告げる。その姿は凛々しく、美しい。
『月魚』 三浦しをん