『燃焼のための習作』
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2019-02
本がすきだ。
喫茶店で、コーヒーを飲みながら読む本がすきだ。家でも本を読むためにコーヒーを淹れる。
けれどやっぱり、誰かが淹れてくれるコーヒーは尚おいしい。
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『燃焼のための習作』の主人公、探偵の枕木は日夜コーヒーを啜る。
ネスカフェに、スプーン印の角砂糖とクリープ。その名も「三種混合」。
かなり甘そうだけど、同僚のさと子さんが明るく話しながら淹れてくれるそれは、とてもおいしそうだ。
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たった3人の登場人物が代わる代わる記憶を焼き直していく中編小説。
舞台にしたらすごくおもしろいと思う。岩松了とか絶対ぴったり。装飾も音楽も極限まで削ぎ落とした静かな演劇が、脳内でプクプクと膨らむ。順番に3人を照らすスポットライト。
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堀江さんの小説は静かだ。この静寂を買ったんだなぁ、と、ゆっくり味わうのが魅力。
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『燃焼のための習作』堀江 敏幸