『あこがれ』
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2019-03
産まれて間もない息子の肌を見ていたら、白いサンドウィッチが食べたくなった。
「できたてほやほや」は湯気が立っているイメージだけれど、温かいトーストサンドやチーズとろけるホットサンドよりも、白いサンドウィッチにこそ、できたてほやほやのピュアを感じる。
『あこがれ』の主人公の少年はおこづかいで白いサンドウィッチを買う。薄ペラいタマゴサンドだ。
サンドウィッチをおやつに買う小学生とは、なんて素敵なんだろう。私は塾の帰りに12個200円のたこ焼きをよく買っていた。関西人。隣にサンドウィッチ屋さんがあってもたこ焼きを買っただろう。
同じ小学生でも、違う人間なのだ。
この世界は大人のものではない。
子供たちは立派ないち人間で、他人にあこがれを抱き、家族を慮り、言えない気持ちを胸に抱え、打ち明ける相手を慎重に選ぶ。
そんな当たり前の事を『あこがれ』を読むと思い出す。
あこがれ。このきらめく感情を健全に育む世界がいい。
10代に戻れたら、自分に薦めたい一冊。
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『あこがれ』 川上未映子