『南の国のカンヤダ』
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2020-01
今の時代、まっすぐ正直に生きるということは狂気じみていると思われる節がある。
何を考えているのか分からない!なんてわがままなの!自分勝手な人!もっと器用に振る舞えばいいのに!という要素を満たしている人は、絶滅危惧種であるまっすぐ正直に生きる人なのかもしれない。
本作の主人公は、スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫の元ご近所さんだった、タイ・パクトンチャイ出身の女性カンヤダ。
彼女はまっすぐ正直な人であり、自分の宿命を呪いつつも決して生き方を変えない。理想があれば、妥協はなくそれに突き進む。ゆえに壁を越えるのは難しく、つまずきやすい。それでも、自分を曲げない。例えうまくいっても、自分の意に沿わなければ勝手にフェードアウトする。多くの人を巻き込んでカンヤダのために動いているのに。行動原理は、まっすぐ正直に。
宮崎駿作品の登場人物は、まっすぐ正直だ。彼らは自分を曲げないというある種の狂気を帯びて、たった1つのことに向けて猛烈に走り抜ける。もし、ジブリのキャラクターが本当にいたら?という問いがあれば、答えは巻き込まれたら迷惑、であろう。ただし、巻き込まれてみたくなる魅力があるのも事実。日々、つじつまを合わせていくことを良しとしている私にとって、カンヤダ、そして宮崎駿のようなまっすぐ正直な人物との出会いが人生のカンフル剤となるだろう。そして人生を狂わせ、予期せぬ生き方を獲得できるはずだ。まだ見ぬパクトンチャイの夕暮れに想いを巡らせながら、元日の山口県にて。
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「南の国のカンヤダ」鈴木敏夫