『インターネット的』
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2020-01
インターネット。2019年において、もはや一般的というかこの言葉を使うこと自体が多少のダサさを与える。1990年代に入り「糸井が効かなくなった」という実感と合わせて広告が必要とされなくなる時代の予感から立ち上げた「ほぼ日刊イトイ新聞(通称ほぼ日)」は、糸井さんの主戦場だった紙媒体ではなく、インターネット上に生まれた。
スタートは1998年。日本のあらゆる音楽の分岐点となった年に誕生したメディアは、糸井さんの同業者などからは冷たい目で見られ、「インターネットでメディアなんて所詮すぐに終わるさ」と笑われた。その後、メディアとしての成熟はもちろん、「ほぼ日手帳」などのヒット商品を手がけ、「生活の楽しみ展」という催事は大盛況。会社は一部上場。クリエイティブ系ビジネスパーソンたち、こと現在35〜40歳の野郎たちに関して、一度はほぼ日のようなメディア立ち上げを夢見ただろう。もうかりまくっている「北欧、暮らしの道具展」はほぼ日を徹底的に猿真似をしたらしい。ほぼ日は、当時から2019年現在に至ってもなお先頭を走っている。糸井重里さんが時代の空気を読み続けた結果であろう。さすがコピーライター! そんなことはどうでもいい、本書の説明を。といっても、おそらく『インターネット的』という言葉が全てを言い表して、それがオンラインやオフライン関係なく、リンクしシェアしているんだぜというのは、人間関係や社会ってそうだもの、としか言いようがない。ただし、その時代時代に合わせて、そのやり方やかたちは変えなければならないのだが。そういった意味で、『インターネット的』という本は世阿弥の「風姿花伝」に近い。だからこそほぼ日を、『インターネット的』に書かれている事象を、徹底的に猿真似するべきなのだ。それはもう過剰なほどに。
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『インターネット的』糸井重里