『夫婦善哉』
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2019-02
「一人より女夫の方が良えいうことでっしゃろ」
初読は高校生。電子辞書に入っていた青空文庫で斜めよみして、それきり。書店でオダサクを見るたびに、読み返そうかな、なんて手にとっては戻し、をずるずる。情けないことに、物語内容はほとんど覚えていなかったのだけれど、「ぜんざい」につられて自販機でカンカンのおしるこを買ったことは覚えている。食い意地のはったJK。
さて、「めおと」と「ぜんざい」について少し。『夫婦善哉』は「めおとぜんざい」が正しい読みだけれど、「めおとよきかな」とも読める。表題の「めおと」は「夫婦」とある。しかし蝶子と柳吉が「めおとぜんざい」に行く場面、蝶子の語りである地の文や会話文の「めおと」は「女夫」となっている。ここに『夫婦善哉』で描かれる「めおと」像が表れていると思う。
「夫婦」ではなく「女夫」という表記であるのは、蝶子と柳吉なりの「めおと」が成ったことを示唆すると思う。たしかに、蝶子と柳吉はいわゆる「ふうふ」ではない。でも2人なりに「めおと」になろうとして、2人にとっての「めおと」の形が最後の場面に表れているんじゃないのかな、と。「夫婦善哉」、「めおとよきかな」とも読めるのではないでしょうか。
なんだか、無性にぜんざいが食べたくなってきた。あの頃はカンカンのおしるこだったけれど。甘いものバンザイ。織田作之助『夫婦善哉』