『コインロッカーベイビーズ』
-
2019-05
俺達は、コインロッカー・ベイビーズだ。
・
カンブリア宮殿、というテレビ番組がある。高校生の頃から観ていた。だから村上龍は、番組司会というイメージがあって、小説を執筆していることを知ったときは驚いた。
読後感は、良くはない。けれど、どこか解放感というか、清涼感に似た感覚があった。何かこう、自分の中に眠らせてるものを覚醒させる劇薬みたいな。起きろよ、目ぇ覚ませよ、って。
アネモネの「まじめな女の子には魅力がないから、あたしはまじめになりたくないわ」。心を抉られた。私は「まじめ」であることで、自分の居場所を作ろうとしたタイプの人間だ。アネモネの言葉は「お前は魅力的でない」と断言されたように感じた。お前、面白くねえんだよ。ほら、思い返してみろよ、周りの奴はお前の魅力に寄ってきてるんじゃねえ、使い勝手がいいからだろ、所詮代替可能なんだよな、って。
今思えば、認めてほしくて嫌われたくなくて「まじめ」という選択肢を選んだけど、どこかでボタンを掛け違えた。私が思ってる「必要とされる」は今の自分じゃ叶わない。「まじめ」というコインロッカーを破壊できる日は来ないだろうな、私は弱虫だからキクやハシやアネモネみたいにぶっ壊せないし生き返れない。なんて、ちょっとおセンチな気分になった。『コインロッカーベイビーズ』村上龍