『おとぎ話の忘れ物』
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2019-04
〈湖の雫セット〉、ご用意できております。ご希望どおり、涙色のリボンを結んでおきました。
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大学の図書館を歩いていると、惹かれる本を見つけることがある。それが『おとぎ話の忘れ物』だった。何だか背表紙に目がいって、思わず借りてしまった。「おとぎ」ってことばに弱い。
収録されているお話は、可愛いさの中にも、怖さというか、ぞくっとするところが随所に散りばめられている。「少女」らしさが感じられる短編集だと思う。ここに収められている「少女」はあくまで「おとぎ」の「少女」であって、少女小説の「少女」とは位相が異なる。
「少女」らしさ、それは時代によって移ろう偶像なのかもしれない。小説やお話は、時代の「少女」を映す鏡だと思う。一方で根っこの部分はあまり変化しないのではなかろうか、とも思う。「おとぎ」話でお姫さまの洗礼を受けた「少女」たちは「おとぎ」を夢想して大きくなる。さて自分が「少女」になった時分には、お姫さまは存在しないし王子さまは来ないし、ガラスの靴は黒の就活パンプスだし、ドレスはスーツだし。でも世の中のニーズがあるのは、ある意味「少女」らしさがある女性だし。普通に生きるってハードルが高いと本当に思う。普通ってみんなが思う普通だから、それってつまりマジョリティが思い描く理想でもあると思うから。そのルートに入るのって、したたかに人生計画を立てないと難しい(※あくまで個人の感想です)。
おとぎ話って結婚までで、幸せになりましたとさ、でおしまいなところが味気ない。それからの方がよっぽど長いのに。現代版シンデレラのその後とか、そういうお話があれば読んでみたい。『おとぎ話の忘れ物』小川洋子、樋上公実子