『二十億光年の孤独』
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2019-06
えへん わたくしはあるいている
ノートをかかえ 二十世紀の原始時代を
とことこ てくてく あるいている
はにかみながら あるいている
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たまに、唐突に、詩を読みたくなる。何かつまっている時に、詩に答えを求めたくなったりする。普段はほとんど読まないけれど。去年の夏、つらくてつらくてたまらなくなった時に、ふと読みたくなったのが『二十億光年の孤独』だった。
上に引用したのは「わたくしは」の一部。今まで「私」というノートに、こまごまと書きこんできたあれやこれやがすべて記されていて、全部今の「私」を形成するピースになっているんだ、と思えた。パラパラとページをめくると「今」が見えてくるかもしれない。教科書には『二十億光年の孤独』がよく採用されているけれど、この詩も採用してほしい。
昔は詩がきらいだった。小説や評論は一般的な読みや意見があった。詩は違う。テストで「波線部は何を表すか答えよ」と問われて答案を書いたら三角をつけられる。読みは自由だって言ったのに、と思うひねくれ者だった。
拝啓 小学生の私へ、大きくなった君は詩をたのしく読めていますよ かしこ『二十億光年の孤独』谷川俊太郎