『ヒロシマ 消えたかぞく』
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2020-01
新しい戦争絵本だと思う。
表紙は鈴木家の長女・公子ちゃん。ほかの家族は、お父さん・六郎さん、お母さん・フジエさん、お兄ちゃん・英昭くん、弟・護くん、妹・昭子ちゃん。犬のニイと猫のクロ。
でも、広島に原爆が落とされたことで、みんな命を落とした。
六郎さんが撮った家族写真。みんな自然な笑顔で生きている。戦時中でも、日々の生活があり、楽しみがあったってわかる。今を生きる私たちとなんら変わりのない平凡でいて、しあわせな日常。
それが一瞬で…。
子どもの頃、家には何冊かの戦争絵本があった。「おこりじぞう」や「ひろしまのピカ」。あと、「風が吹くとき」はアニメーションで観た覚えがある。戦争モノは怖かったし、悲しかったし、どうしていいかわからなかったけど、母によると、私は「おこりじぞう」がお気に入りだったようで、小1の時にみんなにも読んでほしいと学級文庫に持っていったらしい。(たしかに本に名前が書いてある!)それくらい子どもながらに衝撃を受けたのだと思う。
そんな私が大人になり、久々に衝撃を受けたのがこちらの絵本。原爆が落とされた後の写真はない。きのこ雲の写真1枚のみ。生前の家族の写真と共に家族のその後が語られる。でも、悲惨な写真がないことで、だからこそ想像する部分もある。
戦争写真が赤裸々に載る絵本も、被曝した状態が描かれた絵本も、もちろん見て読む方がいい。でも、この幸せとしか言いようのない家族写真で綴られた「ヒロシマ 消えたかぞく」も戦争を知る絵本としてあわせておすすめしたい。平和の尊さがよりわかる気がする。
「ヒロシマ 消えたかぞく」指田和 / 写真・鈴木六郎