『ふるいせんろのかたすみで』
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2020-01
年末が近づくといつも買っているわけでもないのに、
なんとなく宝くじのことが思い出されるのは、私だけでしょうか。
宝くじの話です。
古い線路の片隅にある家々。住んでいるのは年老いた貧しい人ばかり。
隣の家がゴミ捨て場になっていることが気になっているおばあさんや、世界の色々な料理を作りたいけど材料を買うお金がないおばあさん。
窓の外をぼーっと見ている元軍人さんや、子どもたちがゴミ捨て場から持ってきた部品を組み立てる男の人。
ある日、みんなで買っている宝くじが大当たりし、住人たちはそれぞれにお金を使うのだけれど…。
住人たちのお金が入ってからの変わりようが描かれていて、絵本?と思うようなリアルさにびっくり。
住まいを綺麗にリフォームする人や、自分のやりたいことをやる人、今までと変わらない人と本当に様々。
何が正しいかはわからないけど、それぞれのお金の使い方に、今までの生き方や性格があらわれていて面白い。
そして、お金を使うことでの幸せの価値も、きっとそれぞれなんだろうなと思わせられた。
例えば、金魚を1匹飼っていたおばあさんが、たくさんの金魚を大きい水槽で飼うことで、結局最初の1匹がわからなくなったというエピソード。
金魚にとっては仲間ができたと思うのか、生活しにくくなったと思うのか。
おばあさんにとっては、たくさんの金魚を飼えて幸せなのか、思い入れのあるであろう最初の金魚がわからなくなることは悲しくないのだろうかとか。
絵がとても独特なタッチで、人物の表情とかもすごい。もしかしたら、子どもだったら怖いって言うかもしれない。
宝くじが当たる前と後でも、建物や全体的な色調が少し変わっていて、絵としても楽しめる。
友だちと宝くじが当たったらどうする?なんて話は、たまにするけれど、この絵本に登場するような使い方はしないかも。
宝くじが当たるということ自体は夢なんだけど、何に使うかって考えると結構現実的で夢がない。
しかも、1億当たったら嬉しいけど、どうせなら3億とか6億がいいよね。
みたいに飲んでいる席のせいか、どんどん話が大きくファンタジーになっていく。
で、最後には「ま、買ってないことには当たらないけどな」で、話が終わる…。
今年は、買ってみようかな。
「ふるいせんろのかたすみで」 チャールズ・キーピング/作 ふしみみさを/訳