『使いみちのない風景』
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2020-01
突然だけど、人生には意味のないものが必要だと思う。
短い文章と写真で、旅先で出会った風景について思いを巡らせるこのエッセイには、ページにも行間にもたくさんの余白が作られている。
そのゆったりしたテンポに合わせてページをめくっていると、読者は自分自身の中にある結論を出さないまま心の隅に追いやっていたことや、自分でも何だったのかよくわからなかったいつかの感情について、無意識に考えて始めている。
必要に追われて考えなければならないことが多すぎる中で、考えなくてもいいことをぼんやり考えることができる時間というのは、いまやぜいたくでもある。
意味のあるものばかりに囲まれてちょっと疲れた人へ、まあ一息いれましょう、とお茶を淹れてあげるみたいな気持ちで差し出したい一冊。
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使いみちのない風景/村上春樹