『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』
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2020-05
本屋の店長であり、今や書き手でもある花田菜々子さんは、文章を読めばわかる、物事をまっすぐ見る人だと思う。正直に、飾らずに、過不足なく。自分が直面している出来事や心の動きを、その豊富な言葉をもって綴る。
本書では、年下の彼氏とその2人の子どもと過ごした時間、そのなかで彼らと関係性を育んでいく様子と、花田さんが店長を務める本屋、日比谷コテージのオープン前後のドタバタが、並行して描かれている。
本文中に出てくるこんな言葉が心に残った。
「関係性は無理やりひとつの方向を目指してこじ開けていくことじゃない。日々のやりとりの中で薄い紙を一枚ずつ積み重ねるようにして、オリジナルの形を作っていくもののようだ。」
ある家族に自分だけ途中参加して、手探りで行きつ戻りつ、関係を築いていく花田さんの、戸惑い/迷い/試行錯誤。マニュアルや正解なんてない、自分の気持ちを相手に伝えるとか、相手を傷つけたら謝るとか、そんな当たり前のことを大事にしながら、個人と個人の関係を積み上げていくしかない。他人と関わることの面倒くささ、そしてそれを上回る愛おしさが、あらゆる初めてのことに伴う新鮮な驚きとワクワクをガソリンにして、スピード感を持って描かれた一冊。