『永い夜』
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2020-01
2019年1月から7月まで BIBLIO APARTMENTの405号室に住んでいた方の本棚にあった一冊
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こどもの頃、夜はいつもひとりだった。深夜にならないと母親は帰ってこない。ほんとならこどもは寝る時間でもわたしはずっと起きていて、本を読んだりテレビをみたり遊んだりして過ごし、毎日母親の遅い帰りを待っていた。
ひとりきりで過ごす夜の時間はふとしたことで永遠のように永く感じられたし、世界にたったひとり取り残されたような気分にもさせる。カーテンの隙間から覗く闇に、壁紙のシミに、風で揺れる窓ガラスの音に、オバケやモンスターの不気味な気配を感じては怖くなってベッドに駆け込んでた。
もう少し大きくなると、宇宙のこととか、神様のこととか、死ぬこととか生きること、人生とか世界のこと、いろーんなことを考えて、感じて、頭も心もぐるぐるする眠れない夜が増えた。じぶんを育む豊かな時間ではあるけど、果てしなく感じられてどこか心細い。思えばそんな夜は随分長く続いて、思春期にまで及ぶ。いや、ハタチ超えても数年、そんな夜は多かったっけ。
だからこの絵本読むと懐かしい感覚がする。夜って哲学しがちでしょ、こどももおとなも。闇の引力で思考も感情も膨張しちゃうらしい。夜は魔物が住むというけれど、打ち勝つ合言葉は「おなかすいた!」なのかもしれない。眠れない夜を眠らない夜にかえて、おやつでも食べながら楽しんでしまおう。永い夜のお供に選びたくなる1冊。
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「永い夜」 ミシェル・レミュー 作 森絵都 訳