『かないくん』
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2020-01
2019年1月から7月まで BIBLIO APARTMENTの405号室に住んでいた方の本棚にあった一冊
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中学生の頃、大好きなおばあちゃんが死んだ。長生きしますようにって毎日祈りを捧げてたのに不条理な現実。それからわたしは2年ほど神さまってやつを恨んで、その間に悲しみと怒りをゆっくり消化して成長した。
すっかり神さまを許せた頃、死ぬことは終わりじゃなく新たな始まりなんだと思えるじぶんがいて、おばあちゃんの死も、いつか来るじぶんの死も、祝福されたもののように感じられた。だっておばあちゃん、おじいちゃんに会いたがってたもん。生きて生きてその先に訪れる死が悪いものなんてどうして言えようか。
おばあちゃんの死から今日に至るまで、身近な人がたくさん死んだし、大好きなおじちゃんも愛犬も死んじゃったけど寂しさと同じくらい労をねぎらう気持ちが溢れて。旅立ちを見送るように泣きながら笑った。死を受け容れることは不思議と清々しかった。
かないくんを読むと、そのようなことを思い出すし考える。白の記憶、死に対する感覚がしんしんと開かれる。おばあちゃんが死んだ時、これからは月や太陽や星になってあなたを見守っているよってお手紙をもらった。今でも寂しくなったら空を見上げるし、愛燦燦と降り注ぐ光はいつもわたしを励まして生かしてくれる。生きるもの生きたもの、どちらにとっても死は終わりじゃなく始まり。けど死は訪れるもので迎えに行くものではないから、生かされる限りめいっぱい生きて、願わくばいつか訪れるその時、凛として死を迎え入れたいと思う。死ぬとどうなるんだろう、死んでからのお楽しみ。
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「かないくん」谷川俊太郎 作 / 松本大洋 絵