『モンテロッソのピンクの壁』
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2020-01
2019年1月から7月まで BIBLIO APARTMENTの405号室に住んでいた方の本棚にあった一冊
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なぜだかわからないけれど、無性になにかしたくなる時、あるある。なぜ、どうやって、それをしてどうする、なんて考える余地もないくらい突き動かされるなにか。そーいうのって魂が求めてるとでもいうんだろうか。そーいう時、ネコも人もうしろを振り返ったり躊躇しないもんだ。
「何かを手に入れるためには何かをあきらめなきゃいけないってことくらい、私はよく知っている」
ハスカップはとても凛々しく品があって聡明なネコ。うそをつくのが上手で道徳的なネコではないけれど。夢にでてきたピンクの壁を求めてモンテロッソへと旅に出る。ネコは死期が近づくと姿を消すっていうけど、もしハスカップみたいに「〜へいかなくちゃ」って魂が呼ぶのならステキだと思った。
そしてもし魂の旅の最期にみるのが、あの白ワインで蒸した鮭みたいな壁、やわらかくてやさしくてあたたかい心地のするきれいなピンク色なら、たとえそれが夢の中でも、どんなにステキでしあわせなことだろう。なんてネコの幸福を想ってみたりもした。
これ、文庫版のを持ってるのだけど、そのサイズ感も含めてとーってもだいすきな絵本。ボリューム満点に描かれた荒井良二の絵が最高にすばらしくって。文章とも絶妙にマッチしてる。ハスカップの生きる世界は、ネコも人も街もぜんぶカラフルで爽快で魅力的だ。みんな気高く生きてるみたい。
そういえばこの本の背表紙にはハスカップが「勇敢に旅立った」とあるけどわたしはそうは思わなかった。くるりの”ハイウェイ”って曲、あんな感じ。
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「モンテロッソのピンクの壁」 江國香織 作 荒井良二 絵