『趣味で腹いっぱい』
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2019-07
趣味がほしいねん」 仕事終わりのファミレスで、友人と近況報告やドラマの感想を語り合っていたときに、こんな話題になった。
カメラは?山登りは?
パン作り?いや、そば打ちか?
いくつか候補をあげたのち、私たちは1万人でベートーベンの「第九」を合唱する、というイベントに参加することにした。
巨大なホールで歌う本番を目指して、毎週近くの市民ホールへチームレッスンに通う。その未知な時間は、デートのような緊張と高揚があり、結構熱心に自主練したりした。たのしい思い出だ。 『趣味で腹いっぱい』で、あらゆる趣味を謳歌する鞠子を見て、その気楽で浮かれた気分が懐かしくなった。
趣味至上主義な鞠子は、反対に「趣味<労働」「働かざるもの食うべからず」を信念とする夫と、たびたび意見がすれちがう。 けれど、たとえ意見が対立しても泣いたりせず、冷静に言葉を重ねる。その対話スキルが見事で、私は「夫婦喧嘩の教本」としてこの本を本棚の目立つ所に掲げている。
終盤の笑える温かい展開や、丁寧で芯のある登場人物たち。ナオコーラ作品の「大すき」が詰まった一冊。 表紙も、かわいいんだなぁ〜。
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『趣味で腹いっぱい 』山崎ナオコーラ