『鉄のしぶきがはねる』
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2020-01
工業高校に通う三郷心(しん)。これからは人でなく、コンピュータの時代だと考えている。
だから、先生に筋がいいから旋盤をやってみないかと言われるが速攻で断る。祖父と父がやっていた三郷金属工場は5年前に廃業。そして、祖父はその心労で肺炎を起こし亡くなってしまった。そういう嫌な思い出がよみがえってくるから、旋盤はやりたくないのだ。なのに結局やるはめになり…。
コンピュータだから出来ることももちろんある。でも、機械は使うけれども、人の手で動かすから生まれる鉄の精巧さと美。私たちが日常目にしている工業製品の細かな部品は、技術者のたゆまない努力と経験に裏付けされた確かな技術によって生み出されている。
作中で心が今日の課題を終えた後にもっと練習したいと先輩に訴え、ケガをしてしまうという場面がある。どんな仕事であっても、焦りや無理がミスを引き起こすのは同じ。
モノを見る目が変わると同時に、仕事に対する自分の働き方も考えさせられた。
フルタイムで疲れたこともわからないまま働いていた頃には、もうすでにその焦りを感じることもなかった。でも今、自分の体調を見つつ働いてみると確かに同じ作業をしているのに疲れている時とそうでない時があって、気持ちの上では理解していなくても、体の方がきっちり休息を求めてきて、自分の体なのになんだかびっくりしている。
「鉄のしぶきがはねる」 まはら三桃